遠い日へのヴァリエーションより「 風と枯木の歌 」



「風と枯れ木の歌」        詩  立原 道造


(主に女性合唱)
《むかし むかし 明るい草原ばかりを吹いていた
 野あざみや野ばらが溢れ そこには花咲いていた
 あれはもう 夢のよう 私の声を
 人々は胸をどきどきさせて聞いていた…

(主に男声合唱)
《それは誰もおなじことだ おれに一羽の
 小鳥が住んでいた 朝ごとにひとつの 眼覚めを持って
 ひとが来て かげにたたずんで よくささやいたものだった
 もう一度逢う日はないかと―己は いつも黙っていたから

(主に女性合唱))
《ひとしきり落ち葉して 灰色の中に灰色で
 あなたの姿は描かれた  その日から
 わたしは歌を かえはじめた もうだれも私をうけとらない

(主に男声合唱)
《おまえは己を いつも傷める  おまえが
 うたっているのだろうか おれがうたっているのだろうか
 こんな哀しいくりごとを! ああ 雲のゆききの 冷たいこと!



 始めから最後まで5拍子にこだわりをもって作りました。
またこの組曲のなかでしばしば登場する5度の堆積された和音を一つのテーマとしてあえて使っています。
構成的には詩の中の「風」を主に女性合唱が、そして「枯れ木」を主に男声合唱が受け持ち対話形式の
ストーリーを展開してゆきます。
初演時は「枯れ木」の部分はナレーションでしたが、2020年に大幅に改作し、
このような構成となりました。

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