余禄(3) 豪華客船 クインメリー号 |
1954年9月,月刊ポピュラサイエンス日本語版誌上に 『豪華客船クインメリー号1/200模型の作り方』、の記事が紹介された。著者は伊藤主税とあり、2か月にわたる製作記事は、安価なブリキ板を材料に、全てがて手作りであったので、早速コピー製作をすることにした。工具はブリキ鋏にハンドドリル(手回し)、数本の組ヤスリ。接合は全てハンダ溶接、ビスは、ほとんど使用しなかった。ちなみに同船は、全長309m,排水量8万トン、旅客2500人、
船員1100人、姉妹船クインエリザベスと共に、イギリスを代表する豪華客船であった。模型化しても全長1,5mと、なかなか見事な仕上がりとなる訳。
四角の窓は、全てドリルの下穴をヤスって整形するなど、手間暇かけた懐かしい手作りの工作時代であった。動力は平角乾電池で12V、電池用ミニチュア真空管使用のラジコン装置などは、当時としては先端技術であったかもしれない。排水量が大きいので,喫水線迄、船体を沈める為にかなりの荷重を積載する必要があった。
以来50余年、様々なエピソードがあったが、1987年、イギリスのミュージカル、スターライト、エクスプレスの、来日公演の折、その主要スタッフが、この模型クインメリー号を中央に記念写真を撮った事があった。
元来、蒸気機関はイギリスで開発、発達を遂げたものであり、このエネルギイが産業革命に大きな役割を果たした歴史に、国民的誇りを持っているのが、イギリス人である。こういう人たちが、東洋のささやかな片隅に、その誇り高き巨船が,たとえ模型であっても、存在していることは、大きな感動であったにちがいない。たまたま愚息が、同公演の音楽関係を主掌し、話題となり、実現した次第。
ミュージカルのテーマは、華やかな電気機関車に混じって、鈍重な蒸気機関車が、最後に脚光を浴びるという、いかにもイギリス人好みのストリーであった。 スタッフの内、特にお世話になったステージマネージャーには
愚息がお礼の意味で、国鉄C57機関車(2,5吋)を、お贈りしたが、後刻鄭重な礼状を頂いたが、同機の貴婦人というネームヴァリュが、花を添えたこととおもわれる。正に誇りある蒸気機関のお国柄。
暫らくは、ほこりを被り倉庫の片隅に投げ出されていた巨船もようやく陽の目を見る機会がおとずれた。それは8年程前のことである。神田の科学教材社(誠文堂新光社代理店)を訪れ物色中、片隅にテスリを発見、本数も頃合なので、残品をそっくし購入した。近頃すっかり見かけない部品なのでほんとうに嬉しかった。この船の市販部品は、このテスリのみなので、これが入手は復元への大きな前進となった。
エンジンは、以前2,5吋シエイを製作した折,試作した2気筒立 型エンジンがあるので、これを使用するが、 一番の重点は低音 部の豊かな汽笛を装備することです。低圧ボイラーと,管の長い汽笛を組み合わせて、成功させたいと思っている。以上 (モノ写真は完成当時のもの、1954.12.10完)
□ 最終迄、ご覧頂き有難うございました。
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